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特許の取り方、手続・料金等をやさしく解説!

特許に関心を持つ人は多いです。
自分のアイデアや発明について特許を申請したいと考えている人もいるでしょう。

ですが、一般の方にとってはその申請(出願)手続も含め、なかなか分からないことばかりだと思います。
特に料金や費用をめぐっては、特許事務所とトラブルになることも少なくありません。

そこで今回は、特に初心者を念頭に、特許の取り方、手続及び料金を分かりやすく解説していきます。

大金を払ったが、こんな筈ではなかった、という事態を回避するとともに、納得のいく実りある特許を取れるよう、ご案内させていただきます。

目次

特許の取り方①:特許を取るための手続の概要

特許を取るまでの一般的な手続きの流れをザックリと示しておきます(注:特許とは登録を意味しますが、これによって全国一律に独占排他権が発生するのです)。

  • 特許調査・書類の作成→特許出願→審査請求→拒絶理由→各種対応→特許又は拒絶
  • 特許の場合→料金納付で特許取得
  • 拒絶の場合→審判請求→(それでもダメなとき)訴訟

以下、簡単に解説しておきます。

先ず特許を取ろうとする発明に関連して、既に知られている先行技術の調査をします。

その上で当該発明について特許要件を満たすように出願書類を作成し、これを特許庁に提出します(これが特許出願です)。

ですが、この特許出願をすることで自動的に審査(特許できるか否かの特許庁によるチェック)がされるわけではありません。
出願とは別に「審査してください」という手続き(出願審査請求)をする必要があります。

この手続きをして、やっと審査が始まりますが、ここからも色々と大変です。
複雑なのは最初の出願手続きだけではないのです。

通常、特許庁から拒絶理由通知(特許の要件を満たさないので特許になりません、という通知)がきます。

これに対して、その特許にならない理由を解消すべく、発明の範囲を狭めたり(補正)、特許要件を満たしている旨の主張(意見書)を出したりして、なんとか特許に(それも、できるだけ広く強い特許に)漕ぎ着けようとします(中間処分といいます)。

それでも特許してもらえないときは、今度は特許庁内の上級審に当たる審という部署で審理してもらいます(審請求します)。

さらに、その審判で審理してもらってもダメな場合は、今度は裁判所で争う途も開かれています。

もっとも、実際は、そこまで行く前に(当初に比べ)狭められた発明で特許を取得するケースが多いです(もちろんダメで終わるケースもアリ)。

こうして特許を取るまでには、平均して約14ヶ月ぐらい要するといわれています。

特許の取り方②:特許を取る際の料金について

注意!料金についてはトラブル多し(特に中小個人の顧客)

特許を取るための手続について、その概要を説明しました。

ここで顧客にとって(特許取得以外に)もう一つ気になることがでてきます。
費用や料金についてです(以下では特許事務所を通じた出願を念頭に置きます)。

特許出願には色々とコストが発生しますが、それは出願時だけではありません。
基本的に先ほど説明した各種手続きに応じて、次から次へと特許事務所から請求書がやってきます

特に中小企業の顧客からすれば、出願審査請求、意見書、補正書、特許料プラス成功報酬…???

特許を取ろうとしたものの、請求書の山。
その内訳を見てもよく分からず、一体何なんだ!という気持ちになってきます。

他方、事務所側にしてみれば、十分説明したはずなのに、請求書を送付しても入金が確認できません。

担当者(場合によっては社長自ら)がクレームを言ってくることもありますが、連絡が取れず、結果として(特許庁に料金を納付できないため)出願がすべてパーになってしまう、なんてことすらあり得ます。

こうしたトラブルは弁理士会にも結構あがってくるようです。

料金の目安をザックリと見てみる

先ず料金・費用についてトータルでどれだけかかるかを大まかに示しておきます。
一つの目安として参考にしてください。

以下では請求項が少なく、かつ案件がシンプルなケースを想定しています。

  • 特許取得までに最低でもおよそ50万円:相場としては60万から70万円(特許の維持費用はまた別)
  • 出願時だけでも最低40万は見込んでおく
  • 請求項の数や出願内容によって金額は変動する
  • 料金の安さだけで事務所(弁理士)を選ばない
  • 特に「××万円以内に収めてほしい(予算)」を絶対条件にしない

注:請求項とは、特許を取ろうとする発明を記載する箇所のこと(複数記載でき、それぞれに特許権が設定されます)。
例えば、請求項1:デジタルカメラ、請求項2:手振れ防止機能付きデジタルカメラ、請求項3:~、などと発明を掘り下げたりしていきます。
その結果、請求項1の発明についてはダメでも、請求項2、3の発明では特許できると判断されることもあります。

少し補足します。

料金といってもその内訳は複雑です。
大きく分けると、特許印紙代(特許庁への料金)と弁理士報酬に分けられます。

前者は請求項の数によって変わりますし、後者の弁理士報酬は事務所によってかなり幅があります。

弁理士を通さず自分で手続きすれば特許印紙代だけで済みますが、個人的にはあまりお勧めしません。
出願書類の作成にせよ、中間処分にせよ、素人には複雑過ぎます。

次に内訳も含めた料金の具体例を示してみます(審査段階で特許が取れたことを前提としています)。

料金の具体例:請求項1個でシンプルなケースを想定
  • 出願時の特許印紙代(出願費用・審査請求):約16万
  • 出願時の弁理士報酬:30万
  • 拒絶通知への応答時の弁理士報酬(意見書・補正書作成):7万
  • 特許を取れた時の特許印紙代(登録料3年分):約14,000円
  • 特許を取れた時の成功報酬(弁理士報酬):10万

単純トータルで644,000円

これとは別に4年目以降も毎年維持費用(年金)がかかってきます。
しかも年数が長くなるにつれ高くなります(請求項の数によっても増額し、毎年何万円もかかってきます)。

結論として、しっかりとした強い特許を取ろうとすると、コストはそれなりに発生してきます。

特に特許出願の中身(つまり特許の質を決定する要因)は、弁理士によって大きく左右されます(2つと同じものはできません)。

その結果、腕のいい弁理士に依頼すると、それなりにコストが発生してくるのです。

また、正直、低価格(だけ)を売りにする事務所はあまりお勧めできません。

コスト面も含め容易に取れた特許は、権利としては弱いものになりがちです。

特許の取り方③:あなたの発明・技術は公開される!(出願公開)

出願公開といいますが、意外と知らない方が多そうです(公開されるのを知って驚く人も少なくありません)。

特許出願から1年6ヶ月であなたの発明に関する出願書類は公開されます(特許法第64条)。

つまり、あなたの発明・技術が社会において周知になるということです。
発明の内容を社会一般に公開する代わりに一定期間
独占排他権(特許権)を与える、という考え方からです。

これは見方を変えると、自社技術とその実施状況がライバル企業等の他者に知れ渡ることを意味します。
ここがいわゆるノウハウと異なるところです。

アイデア等をライバル企業にどうしても知られたくなければ、秘密にしておくことも一考です。

ですが、その秘密にしていたノウハウ技術がライバル企業に利用されてしまうかもしれません (例えば、その技術を用いた製品がライバル企業の手にわたって解析される等)。
でも、特許がなければ何ら文句は言えないのです。

特許の取り方④:特許の有効期間はホントに20年?

巷の素人向けテキスト等では「特許の有効期間は20年」などと記載があるのを目にします。
間違いとは言い切れないのですが、少し注意が必要です。

もう少し厳密に言うと、特許は特許庁に出願した日から20年で消滅する、となります(特許法第67条)。

言い換えると、特許の有効期間は特許権の発生から20年ではない、ということです。

審査が長引けば、それだけ権利行使ができる期間が食べられてしまうのです。
結果として、特許権の権利行使ができる期間は20年より短くなります。

なお、繰り返しになりますが、現在審査には14ヶ月ぐらいかかるといわれております。

特許の取り方⑤:特許事務所(弁理士)を活用しよう

専門性が高く複雑な特許出願では、コストはかかるものの、やはり特許事務所を活用するのがベストです。

ただし事務所も様々で、それぞれに特徴があります。

そこでここでは、大まかに大規模事務所と小規模事務所を対比してその長所・短所を簡単にまとめておきます(注:私の個人的見解です。すべての事務所に画一的に当てはまるものではありません)。

◆大規模特許事務所

長所・あらゆる案件・分野に対応可(特にマンパワーでは圧倒的に有利、以下同じ)
・訴訟や国際出願にも対応可(注:中小個人事務所でも対応可能なところはある)
・大量の出願にも対応可
短所・画一的な対応に終始する可能性(マニュアル的)
・どの弁理士が対応してくれるか必ずしも明らかでない   
・勤務弁理士達のモチベーションはいかに?
・大口得意先でないと、事務所によっては新人の実務教育用として扱われることも

◆中小個人特許事務所

長所・きめ細やかで柔軟な対応が可能
・個々の担当弁理士の顔が見える
・所長自らが熱心かつ丁寧に対応してくれることも多い(ただし料金にもよる)
短所・弁理士によって得意・不得意分野がある(すべてをカバーしきれない)
・職人気質的な部分が事務所のカラーとしてでやすい(顧客との相性も影響する)   
・料金が必ずしも事前に明確でなくトラブルになることもゼロではない

大規模事務所ではあらゆる分野を扱っていることが多いのに対し、中小個人事務所は得意分野が限られてくるかもしれません。

ですので、できるだけ料金とともに事務所がどんな案件を扱っているか事前に確認した方がよいでしょう。

具体的な特許事務所(弁理士)の業務実績を調べるにはJ-PlatPat(特許情報プラットフォーム)が便利です。

まず、上のメニューから「特許・実用新案」の「特許・実用新案検索」をクリックします。
次に、「検索キーワード」の一つめの検索項目から「代理人」を選び、キーワードに「(弁理士の)」を入力します。
続けて、同様に、二つめの検索項目から「代理人」を選び、キーワードに「(弁理士の)」を入力します。
最後に、下の「検索」ボタンをクリックすると、特許関連の文献が一覧表示されます。

特許の取り方と注意点:まとめ

特許出願とその注意すべき点について概観してきました。

簡単にポイントをまとめると次の通りです。

  • 特許を取るには出願を含め複雑な手続きが必要
  • コストは60~70万と高額である
  • 取りやすい(安く取った)特許は弱くなりがち
  • 特許出願の内容は公開される
  • 特許は出願日から20年である
  • しっかりとした特許事務所(弁理士)を活用する

要するに特許とは、非常に特殊で専門性が高く、カネがかかる、ということです。

逆に言えば、価値のある発明やアイデアをしっかり守ってくれるのです。


これらの点を是非参考にしていただき、自分に合った特許事務所を通じて実りある特許を取得してください。

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