弁理士は40代、50代以上でも目指せるか?特に未経験者は無謀?

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弁理士は士業の中でも、目指す人の年齢は比較的高めです。
実際に40代、50代以上の弁理士試験志願者も相当数います。
「自分も挑戦してみようか」と思う人もいるでしょう。

他方で、こうした年齢を中心に、特に未経験者の安易な受験に警鐘を鳴らす声も少なくありません。
その多くは、「こんなはずではなかった」という事態を回避したい、いわゆる親心からくるものです。

そこでこの記事では、40代、50代以上の人が弁理士を目指すことにつき、その可能性について解説していきます。
特に知財未経験の方は参考にしてみてください。

目次

弁理士試験の40代、50代以上の受験状況

具体的なデータで確認する

まず40代、50代以上の受験状況を実際のデータで確認します。

年齢別内訳志願者数最終合格者数合格率
40代894434.8%
50代654132.0%
60代26710.4%
70代以上8200.0%
受験者全体3,5581935.4%

出典:令和4年度弁理士試験統計(注:合格率は筆者が独自に算定)

志願者の平均年齢は42.0歳、最終合格者のそれは34.9歳です。

年齢別の志願者の割合は、それぞれ40代が25%、50代が18%、60代以上が10%です。
また、同様に合格者の割合は、40代が22%、50代が7%、60代以上は1%を切っています。

40代、50代以上の受験生も相当数いる一方、合格者数は特に50代以上になると急激に減少しています。

弁理士受験において、40代、50代以上が気を付けるべき事

年齢が高くなるにつれて、合格状況が厳しくなる理由としては次のことが考えられます。

  • 短答を中心に暗記すべき量が膨大である
  • 論文では答案作成練習を相当積まなくてはならない
  • 実務と受験勉強は別物!

年齢がいくにつれて、暗記を中心に受験勉強は辛いものになってきます。

また、資格よりも実務能力が重視される特許業界では、最後の項目も厄介と言えるでしょう。

ですが、どんなに仕事ができても、受験勉強に関しては、合格するまでは無資格者であり、見習いです。

他方、今日では、合格のためのメソッドは確立していますし、情報もネット等で十分入手可能です。

なので、受験が長引いている方は、今一度、ご自身の勉強法を見直してみた方がよいかもしれません。

弁理士業界での40代、50代以上の転職事情

業界経験者について

弁理士業界は、資格よりも実務経験です。
言い換えれば、弁理士試験の勉強や弁理士資格が実務に直結しないのです。

また、その実務をこなせるようになるには3~5年はかかるとみてよいでしょう。

そのため、全くの未経験者は、特許事務所への転職については30代前半まで、などと言われています。
採用側からすると、ポテンシャルが期待できるのは通常そのくらいまでなのです。

では、40代、50代以上はどうなるのか、と言いますと、
実務能力もしくは十分な知財キャリアは完成しているということが前提となってきます。

そこで具体的に求められるのは
例えば、

  • 明細書作成で指導できるほどのレベルにまで達している
  • 企業知財部で部長等の管理職をしている
  • 特許庁で審判官を経験している

1番目は、実務が完璧なのはもちろん、若手(後進)の育成、指導ができるレベルまで求められるということです。

2番目の知財部長等の管理職経験者は、狭い意味での実務能力というより、クライアント獲得のためのパイプや人脈を期待してのことと言えるでしょう。
こちらはある意味で、明細書作成のベテラン以上に歓迎されるはずです。

最後は役所OBの影響力。
今日では微妙ですが、審判官クラスまでくると、やはり特許庁の審査の関係上、重宝されるようです。
役所の上級職OBの影響力はまだまだ健在というところでしょうか。

なお、40代以上の弁理士受験者の多くが、特許事務所もしくは企業の知財部に所属しているものと思われます。

これらの方がキャリアを補完するために弁理士を目指すことは、大いに意味があるといえます。

大手メーカーの管理職が特許事務所へ再就職していった話<コラム>:
筆者の父が事務所をやっていた頃のことですが、クライアント(大手メーカー)から「今度、うちの特許部長(当時60歳)をお宅で雇ってほしい」という申し出を幾度となく受けていました。
政治的・商人的振る舞いを嫌う父は、そうした申し出を全て一蹴してしまいましたが、結局、そのクライアントは手放すことに。
他方で、これを受け入れた某事務所(父の後輩が運営している)は急成長、今では業界の一角を占めています。

未経験者について

知財業務に全く携わったことのない、いわゆる未経験者はどうでしょうか。
つまり、40代、50代でキャリアを完全に変更していくことについてです。

先ほど申しましたように、弁理士業界は資格よりも実務が優先です。

なので、資格よりも実務の習得が先となります。

また、企業知財部では即戦力の経験者を求めますので、40代、50代以上の知財部への転職は現実的ではありません。

あるとしたら、所員10以下の小規模(個人)事務所への転職を目指すことになります。

それとは別に、未経験の場合は、やはりそれなりにタイトな制限や条件がついてきます。
例えば

  • 年齢が弾力的でも、40代がリミット
  • 研究・開発などでハイレベルな実績がある
  • 英語力が格段に得意
  • 年収の大幅ダウンは覚悟のこと(300~400万円からスタート)

など。

特に、年収ダウンについては40代、50代以上としては厳しいものがあるため、
未知の分野に転身するよりも、定年まで今の会社に勤続する方が現実的かもしれません。

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40代、50代以上の未経験者はどうしたらよいのか

独立開業について

転職が難しいのなら、独立すればよいではないか

こう考える人もいると思います。

ですが、弁理士業務は明細書作成はもちろん、特許庁手続もかなり複雑です。
弁理士試験合格だけで独立することはかなり厳しいといえます。

手続ミスなどにより、顧客とのトラブルに発展することもあり得ます。

ただし、道が全くないわけではありません。

例えば、顧客(仕事)の開拓とマネージメントに自信のある方。

あまりいないと思いますが、これらが卓越していれば、実は自分の事務所を軌道に乗せることができます。
実務をこなせる人はいくらでもいるので、これらの人を雇えばよいのです。

登録調査機関への転職という選択肢

登録調査機関とは、特許庁からの外注を受けて先行技術文献の調査、解析を行っている機関です。

転職のハードルが非常に低いうえ、特許業務の一環を担うことができます。
特に年齢制限のないところが多く、しかも知財の実務経験は問われません。

40代、50代以上の未経験者にとっては、転職先としては最後の砦と言えるでしょう。

本格的な弁理士業務にどこまでつながるかは不透明ですが、
収入が得られるとともに、弁理士業務の核である明細書にも触れる機会があります。

ただし、理系に関連する経歴等が求められるうえ、仕事の内容は限定的です。

高収入や転職が弁理士のすべてか?(参考)

繰り返しになりますが、弁理士の世界では、基本的に知財業界でのキャリアが転職の前提になってきます。
また、独立しない限り、弁理士資格は必ずしも必要ではありません。

他方で、データを見ればわかりますが、60代以上でも、毎年300人以上が弁理士を受験しています(率にして約1割)。

これらの方々は、各人の考え方や職業観に基づき真摯に取り組まれているものと推察します。
中には、良し悪しは別として、資格取得自体が人生の目標である人もいるでしょう。

そこで、必ずしも

  • (高)収入にとらわれない
  • 転職にとらわれない

としたら、いかがでしょうか。

この場合は、
(試験に合格したら次は)知財についての調査・研究を独自に行っていくことなどが考えられます。

例えば、ネットを通じて法令改正について情報提供したり、知財にまつわる出来事を解説したりできるでしょう(ここで弁理士資格があれば、情報等の信頼度が全く違ってきます)。
また弁理士試験の関連で教えることもできます。

つまり、
経済的な安定性が確保されており、かつ就業の厳しさを十分認識されているのであれば、年齢にかかわらず弁理士の勉強自体は無駄ではない、ということです。

価値観や人生観も含めて本人にしかわからないこともあるので、尚更と言えるでしょう。

忙しい方の弁理士試験対策には、アガルートアカデミーのオンライン講座がオススメです。

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まとめ

40代、50代以上の人が弁理士を目指すことについて解説してきました。

まとめますと次の通りです。

  • 弁理士試験は50代以上になると合格が難しくなる
  • 業界未経験者の転職はかなり厳しい
  • 理系のバックグラウンドがあれば登録調査機関への転職も可能
  • 弁理士の勉強それ自体は否定されるものではない

大切なのは、事前に弁理士業界に関する現状を十分に認識しておくことです。
そのうえで、弁理士を目指すのかどうか判断していくとよいでしょう。

参考にしていただけたらと思います。

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